7月2日。雲の海を渡って、8年ぶりに九州上陸。
たぶんデビューした年の夏頃、初めて福岡を訪れたんだけど、日差しが強くて、街路樹の影がくっきり道に落ちているのを見て、ああやっぱり九州って南の国なんだな、暑いなー、って思ったのを覚えてる。
時は流れ、いまやもしかしたら東京の方が暑いかもですが。

2017年の夏、アルバム「STAY FOOLISH」を携えてのツアー「名も無い雨のように」以来となった福岡。最近はすっかりひとり旅に慣れて、それはそれで気楽でいいんだけど、今回は縁あって地元のスタッフにお世話になり、ほんとうにありがたかった!
まずはランチ、胃袋その1海鮮丼。ごはんとお刺身の間に敷かれたとろろが、海と山をつなぐが如くいいシゴトしてるわけで。

はじめまして、のRED HOUSE。
初めての場所は雰囲気がわからないので、セットリストはゆるく組んで、実際にそこに行ってからあれこれ入れ替えたり考え直したりする。わたしが伝えたいものはもちろんあるんだけど、ライブって半分くらいは、その場所が「歌ってくれる」もののような気もするから。
アップライト。ぐるっとお客さんたちに囲まれて、わたしの背中はちゃんと歌っていただろうか。私の声はあの場所をちゃんと歌わせられただろうか。
楽屋からピアノまでの通路も作れないくらいぎゅっと集まってくれて、ほんとうに、ありがとう。物販も完売御礼。やっぱ九州ラテン系、熱いわ。
あわてたり、笑っちゃったり、ハプニングたくさん。でも、あの魔法みたいな時間、とても言葉にできないから、どうかあの夜あそこにいてくれたあなたの胸に、たくさんの場面が刻まれていますように。

正直いろいろ不安な気持ちの方が強かったんだけど、札幌も、福岡も、思い切って行ってよかったなって思わせてくれて、ありがとう。
2週連続優勝はわたしじゃなくて、遠くても、時間が過ぎても、わたしをあきらめないでいてくれた皆さんです。打ち上げ、胃袋その2。

えー、そんなわけで福岡のセットリストは当日決めたんですけど、本番始まってまあ例によって泣き笑い色々ありまして(笑)後半正気を失って若干記憶が定かでなく、途中からセットリストの紙見るのやめちゃったしやりながらやっぱあれ歌おうこれやめようとか思ったような気がするし本編とアンコールの境目もあったようななかったようなという感じで(汗汗)。順番とかもし間違ってたらごめんね。でも、なんか、ケモノ的に、歌いたい気持ちだけで歌いました。
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独唱2025〜JOURNEY〜
2025.7.2(日)福岡 RED HOUSE
01.I know
02.place
03.満天
04.ライブハウスで会いましょう(未発表)
05.Life is a Traffic Jam
06.遥かなる
(たぶんこのへんまでは合ってる)
07.Fool in the Rain
08.淡々と(未発表)
09.熱狂(未発表)
10.満月(たぶん)
11.Stand and Fight(たぶん)
E.C
01.ひとり
02.流星の日
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一夜明けて翌日は、熊本から駆けつけてくれた旧友田口くん夫妻と、福岡観光三昧。
知らなかった福岡、いっぱいあった。
糸島。楽園か、ここは。

昔ながらの製法で作っている塩が名産。またいちの塩、お土産にたくさん買っちゃった。その塩でいただくゆで卵、ええっプリンに塩!?これが美味いんだ塩プリン、エメラルドグリーンのクラフトビール、こ、これは優勝旅行やないか、と感涙にむせびつつ。

胃袋その3。道すがら、ホントに普通の、なんでもないラーメン屋さんの、当たり前の当たり前に美味しい豚骨ラーメン。

街の真ん中にあるのに、知らなかったなあ。大濠公園。

ああそうだ、8年前も夏で、博多は山笠一色だった。櫛田神社。

いつも、いるのかいないのか、って思ってるけど、この日だけは、神さまはいる、って、思いました。

関係ないけど、行く先々こまめに灰皿があって、たば休に事欠かず、愛煙家としてはありがたい限りでした。写真は櫛田神社。広い境内に、テント仕様も含めて喫煙所多数。大濠公園も同様。東京では考えられない。やっぱラテン系はおおらかなのかな。

キャナルシティでひと休み。ここにも素晴らしい山車が。

冒頭でもすこし触れましたが、今回の福岡行は個人的に、新しかったり、なつかしかったり、出会いと再会の旅になりました。
到着した空港お迎えから打ち上げ後のホテル送りまで、丸一日完璧にアテンドしてくれたみっちー-MITCHY-こと井上美知子さんとお友だちのエリさん。
みっちーは地元福岡でSWEETSというユニットで音楽活動しつつイベンターとしても働いており、橘いずみちゃんから「ねーさん、福岡にこういうめっちゃいい人いるから、九州行きたいと思ったら相談するといいよ!」と以前話を聞いていて、連絡させていただき、お言葉に甘え倒してお世話になり倒したという次第。会場のRED HOUSEも、みっちーがつないでくれて、当日は受付、物販でも大活躍。ランチの海鮮丼も、打ち上げもお任せ、大満足。
ずっとLINEのやり取りで、福岡空港でようやくはじめまして。さっぱりした、気持ちのいい人。かゆいところに手が届く気遣いはさすがイベンター。でもそれ以前に、音楽を愛する心と、演奏者として積み重ねた傷や痛みをちゃんと持ってる人だと思った。だから信頼できるなって思いました。
みっちー、たくさんわがまま聞いてくれてありがとう。またカンパイしましょう、と言いたいとこだけど、下戸なのが残念!(笑)
翌日福岡観光に付き合ってくれたタグチヒロアキくんは、ひょんなことから20年以上前に東京で知り合って、いまは故郷の熊本で造形作家として活動中(田口くんの作品、かっこいいぞお)。今年の春、展示会で横浜にやってきた時久々に再会して、今回奥さんと一緒に福岡まで駆けつけてくれました。
お互い、いろんなことあったけど、いいことばっかじゃなかったけど、わたしは歌を、田口くんはモノづくりをあきらめることなく、また会えたこと、ちょっとミラクルっぽい。でもきっと、あきらめなかったから、また会えたんだよね。
次は熊本にも歌いに行けるかな? 行きたいな。
たぶんメジャー時代ですらちゃんと訪れたことのなかった、佐賀、という土地で、デザイン関係のお仕事をしている東島豊さんとは、2012年に大森洋平くんを通してつながりが生まれ、佐賀で歌う機会を作ってもらって、ほんとうにお世話になったひと。
若き日、大失恋でへこみながら運転していた車のラジオから流れてきた歌を聴き、車を停めて放送局に電話して「ひとり」という曲名と篠原美也子という名前を知った、という猛者。当時はそういう時代だったよね。ずいぶんご無沙汰してしまったんだけど、佐賀から駆けつけてくれて、久しぶりに歌を聴いてもらえてうれしかった。
「自分でもびっくりしたけど、「ひとり」、一言一句全部歌えました!」。本人曰く「8万回以上聴いてますから!」。豊さん、ありがとう。メガハイボールを空けるスピード、さすがでした。またゆっくり飲みたいなあ。
左から、田口くんの奥さんのサッちゃん、エリさん、みっちー、おれ、豊さん、田口くん、田口夫妻の福岡のお友だち神酒(みき)さん(皆さんお写真アップ快くオッケーしてくれました)。東京以外で大人数の打ち上げはなかなかないので、うれしくてたくさん飲みました(いやいつもたくさん飲んでる)。

福岡に来るたびに思い出すんだけど、まだデビューしたばっかの頃、会社や地元のスタッフと中洲でさんざん酒飲んで、そしたら川沿いにおばあちゃんがやってる金魚掬いがあって。
酔っ払ってるし、もちろんすぐ破けちゃう。もういちまい、もういちまい、とムキになるわたしを見て、おばあちゃんは、この子はきかん子やねえ、って笑ってた。
あの頃すでにおばあちゃんだったから、もう空の上かな。もし会えたら伝えたいな。おばあちゃんが言った通りきかん子やったから、いろんなことうまくいかなかったですよ。でも、わたしなりに筋を通して、いまここにいますよ、って。
おばあちゃん、あの時みたいに、笑ってくれるかな。
日々は積み重なってゆくのではなく、すり減ってしまうだけだとしても。
踏みとどまろう、いま、そこにいるひとたちを全力で愛そう、と、心から思った、ふたつの旅でした。
全方位に向けて、感謝を。
札幌編の冒頭に書いた通り、飛行機大好き。
ゆるゆる誘導路を進んで、滑走路に着いて、胸いっぱい吸った息を吐き出すみたいに一気に加速して飛び立つ瞬間が好き。そして到着、着陸、振動と共に逆噴射、全力で止まる瞬間が好き。
全力で走ることと全力で止まることは、同じエネルギーなんだなあと思う。
それはちょっとライブに似てる。
本番に向けて全力で走って、着地するために全力で止まる。
不安に揺れる心は、突破する力でもあるんだ。
旅の終わりは夕暮れに染まる雲の海。1週間分満ちた月に見送られて。
