泥棒は誰だ?


テニスの根浅い我が国でも、さすがに今日はあちこちのトップで報じられた、
大坂なおみ選手の全米オープン初制覇。
内容的には、大坂選手のほぼ完勝だった。
ただ残念ながら、これも多く報道されている通り、
試合中のセレナの振る舞いによって、
記念すべき勝利はとても後味の悪いものになった。

私はセレナをデビューした99年、18歳くらいから見ていて、
おねえちゃんのヴィーナスとふたりで時代を引っ張って来て、
言うに言われぬ苦労もいっぱいあっただろうと思うし、
闘争心丸ごとみたいなプレイスタイルも全然嫌いじゃないし、
結婚しておかあさんになって復帰してきたのもすごくうれしかったし、
長くトップ選手としてコートに立ち続けている素晴らしいプレイヤーとしてのキャリアを否定するつもりはない。
でも、だからこそ残念だった。残念だった。ほんとうに。

セレナがグランドスラムで審判からの警告に噛み付いてトラブルになったのは、
09年、11年、そして今回。
いずれも全米オープン。お膝元での大会。
今日、主審に向かってまくし立てた言葉の中にはなかったけど、
「私を誰だと思ってんの!?」って、顔に書いてあったな。

性差別でも人種差別でも、気に入らないことがあるなら、
その国民的英雄としての知名度と影響力を駆使して、いくらでも戦えばいい。
ただし、コートの外で。
私だったら、本職の最中にああいうふるまいをする人がリーダーの運動には、
たぶん共感しないと思うけど。

試合終了時に大坂選手をハグしたこと、
ブーイング表彰式で大坂選手をかばう発言をしたことで、
「やっぱり、さすがセレナ」「スポーツマンシップ」
みたいな感じで世間はお茶を濁そうとしてる。
アメリカはたぶんセレナを許し、
何事もなかったように来年も大会は続くだろう。
でも、悪いけど、私はだまされないよ。
平気で相手を踏みつけといて、
いやいやあなたは素晴らしかったよ〜って平気で言う感じ、
どっかで見たことあるな。
あの人、どこの大統領だったっけな。

thief。泥棒。
2回の警告で1ポイントを失ったセレナは、主審をその言葉で罵ったことで、
さらに罰として1ゲームを失った。
セレナは激昂して言い募った。
「あなたは私のポイントを盗んだ! 謝りなさい!」

あなたが失ったのは、1ポイントと1ゲーム。
大坂選手が失ったのは、
一生にいちどしかないグランドスラム初制覇の歓喜。
日本人とか、全然関係ない。
自分が優勝した表彰式であんなに悲しそうだった選手を初めて見た。

泥棒は誰だ?