空と海、32回目の春


春の2デイズ終わってほぼ2週間。5月になってしまった。
本番が終わると、ぎゅっと固く縛ったような時間は急にほどけて、日々はさらさらと。
いつもおんなじこと言ってるな。でもいつもそう思うのだな。そのメリハリで生きているので。

カメラマンの井上くん初日は欠席のため、お写真は2日目だけなんですがあしからず。
初日ご来場の皆さま、心のシャッター切った場面をどうか永久保存で。


両日共に満員御礼。「立ってなさい」になっちゃった皆さん、ごめんね、ありがとう。


初日。
4月19日という日は、5年前、代官山UNITでバンドライブをやるはずだった日でした。
今年と同じ、2020年のあの日もいいお天気で、からっぽになってしまった419の青空をぼんやり見てたこと覚えてる。早かったのか、長かったのか、よくわからない。

わたしは、病気でもない人がマスクしっぱなしの社会がまともなわけがないとずっと思ってきたし、いまでも、おかしいと思うこと、悲しくなること、腹の立つこと、いっぱいある。でも、どっち向きにも結局中途半端なまま、5年後の春にいる。

いろんなこと思い出したり思ったりしながら歌い始めた「ひとり」は、やさしくて、厳しくて、どうにもならないことで泣きたくはないって、自分で書いた歌なのに、途中から歌えなくなってしまったんだけど、わたしの代わりに歌ってくれた皆さん、ありがとう。
ああ、そういう歌だ、この歌は、つまずいてる誰かに歌ってあげるための歌なんだって、盛大に転んで、皆さんに歌ってもらって、しみじみ思いました。
雨は続く。受け止めていくんだ。ありがとう。

リクエストライブでとても心に残って、皆さんの前でも歌いたいと思った、「その時」。
「ここはなんてあたたかくて」。広末涼子さんの気性難が他人事とは思えず(笑)。
なつかしい夜遊びの記憶。歌の原点は夜明け。「エデン」。
欲望という名の電車に乗って、墓場という電車に乗り換えて、極楽という駅で降りて。paradise station。壊れたブランチ。タイトルはここから取りました。「極楽駅から見える月」。
忘れてはいなかったけど、普段なかなか表に出てこない歌たちに支えられた日でした。


2日目。出陣直前の顔。


ひょんなことから、頭っから飛ばすやつ、やってみよう、ということになりまして。
「まだやれる」から「でこぼこだらけの運命」まで、客席優勝、でした。
後ろの方で、ぴょーんと立ち上がっちゃった人とか、手を振ってくれたのとか、見えたよ、見えたよ。
篠原美也子のライブが合唱系だなんて、お釈迦さまでもご存知あるまい。
楽しかったなあ。こういうのやりたいって、心のどこかでずっと思ってきたのかもしれないなあ。
でも、似合わないって決めつけてたのかもしれないなって思いました。
ありがとう。またやろうね(ヒソヒソ)。


ドラム田中一光、ベース篠田達也。
長い一拍、永遠の一音。ともに歌を旅してくれたリズム隊に心からの感謝と拍手を。
またやろうね、またよろしくね。


あとでお写真見たら、いつになくリラックスした表情の多かった一光くんは、最近タブレット譜面デビュー。
篠ちゃんはああ見えて毎回すごい緊張するらしいんですが、この春花粉症デビュー。
うーん、わたしは新しいことないなあ。あ、お米やめました。そんなに足元見られてまで買うのイヤなので。農水省とか、備蓄米とか、やる気ないのにやってる感だけなの、バレてるじゃん。付き合わないよ。


2025年は、昭和100年、そして玉音放送から80年の節目。
くり返さないと誓った日々の果て、疫病禍でいともたやすく巻き起こった熱狂は、古いフィルムや、証言、書物で戒めてきたあの戦争とそれを支えた熱狂にあまりにも似ていなかったか。

学ばなければ、節目はただの数字に過ぎない。
32年前、わたしがデビューしたことも、たった6年で戦力外になったことも、なかったことにはできない。
わたしもわたしの歴史から学ぶより他なくて、そこにしか希望はないのだ。


井上くんが撮ってくれた去年春の7thと秋のスターパインズのお写真で、久しぶりにカレンダー作りました。
普段このようにネット上で使っている写真。印刷したらやっぱ全然違った。
モノを作ったなあという実感。かたちにすることの重み。
音楽もかたちにしないといかんなあ、と、思っております。


LIKE A YOUTH
LIKE A BIRD
2デイスのタイトル「地図のない空」「足跡のない海」。
大きな意味で、自由、って感じかな、と、外国語を学んでいる息子に振ったら、こんなコピーを考えてくれたので、Tシャツのプリントに使いました。
いまどきの22歳の若者は、自由を謳歌しているのだろうか。それとも、すでに失う予感を察しているのだろうか。
おかげさまで、Tシャツは完売。多謝。

ともあれ。
あふれるほどの思いとともに、短い春が終わり、次へと動き出しています。
5月18日は橘いずみ、加藤いづみ、おなじみ強力な同僚とステージへ。2回目のアイアイミー。ぜひ。
そのあとは旅に出ます。6/29札幌、7/6福岡。5/3よりチケット受付スタート。めいっぱい歌います。ぜひ。

とっくに捨てた地図。目印のない水平線。
願う気持ちと、聴こえてくる歌声が羅針盤。
迷うけど、転ぶけど、また一緒に歌おう。これからもどうぞよろしく。感謝を込めて。

写真:井上新一郎

篠原美也子 2025 32th SPRING
2025.4.19(土)/20(日)
SHIBUYA 7th FLOOR 2days

Day1 SOLO「地図のない空」
01.誰の様でもなく
02.前髪
03.春のように
04.その時
05.永遠を見ていた
06.LIKE 17
07.ここはなんてあたたかくて
08.信号(未発表)
09.エデン
10.極楽駅から見える月
11.夜間飛行
12.ひとり

E.C
01.熱狂(未発表)
02.スイッチ(未発表)
03.流星の日

Day2 TRIO「足跡のない海」
01.名前の無い週末
02.422
03.loop of smile
04.カーラジオ
05.遥かなる
06.ワザリング・ハイツ
07.ライブハウスで会いましょう(未発表)
08.河を渡る背中
09.Time will tell
10.Pain scale
11.熱狂(未発表)
12.逆光
13.ひとり
14.Fear

E.C
01.満月
02.愛している

E.C 2
01.向日葵