第70球
「満開三昧〜シノハラミヤコワンマンクロニクル〜」

 11月25日(東京百歌vol.14:訳注)の夜、ワンマンのチケットが即日完売したとスタッフが知らせに来た時、私はいつものようにNESTのPA席で、自分の出番を待つ間ライブを見ていた。
 会場には歌声が響き、ライトに照らされたステージと、そのせいで黒いシルエットになったお客さんたちの後ろ姿が見えた。
 そう思った瞬間に、もう次の場所へ行かなければならないとわかっていたけれど、その時間違いなく、私は世界でいちばん幸福な人間だった。世間や時代がどこへ行こうとも、あたしはここにいる、と、叫び出したいような気持ちで思った。そして、そう思うことを自分に許してあげようと思った。
 変わって行くもの、とどまるもの、すべて。笑いたいやつは、笑え。

※00.12.2updateノーコンエッセイ第20球より抜粋。約2年ぶりのワンマンを控えて。

 現役時代の後半、やってもやっても結果が出ない焦りと苛立ちの中で、彼は、あんなに好きだったはずの野球を憎み始めている自分に気付きました。
 来季も契約してもらいたい一心で、言われるままに中継ぎでも敗戦処理でもやったし、苦手だった変化球も必死で覚えました。
 そんな自分を許し続けることが許せなくなったこと、そして自分をそんな風に追い込んだ野球を憎み始めてしまったことが、彼に引退を決意させた本当の理由でした。

※00.12.26updateノーコンエッセイ第23球より抜粋。インディペンデンス初のワンマンを終えて。

A:思うんですけどね、あのライブがすごかったとすれば、要するに弾き語りでライブやる人はいるでしょ、矢野顕子さんとか長渕剛さんとか。でも、あんなにヘタなピアノで19曲2時間45分やっちゃえる図々しい人はいないと思う、あたし以外。そこがすごい(笑)。

※01. 2.10updateノーコンエッセイ第27球、00.12.22ワンマンに関する自問自答より抜粋。

Q:でも今は完全にお客さんと自分のためだけにやってる。
A:そう。今あたしがライブ見て欲しいって思うのは、どっかのえらい人じゃなくて、あたしの歌を好きな人だけだから。別に特別長いライブやろうって思ってるわけでもなくて、今歌うべき歌、歌いたい歌がこれだけあるから歌う、しゃべりたいことがあればしゃべりたいだけしゃべる、これがあたしのスタイルですから、これからも変えるつもりないですし、それを受け入れて楽しんでくれる人たちに対してベストを尽くすってだけです。

Q:大丈夫、ですか。
A:ハイ。自信から確信に変わりました。by松坂大輔。

※01.5.9updateノーコンエッセイ第33球、01.4.30ワンマンに関する自問自答より抜粋。

 もう1ヶ月も経つのに、私はまだ喪失感の中にいる。何かやるたびに、それは積み重ねられて行くのではなく、ひとつずつ減って行くのだと思えてならないから。

※01. 12.18updateノーコンエッセイ第47球より抜粋。大阪・東京2本のワンマンを終えて。

Q:ライブレポにもありましたが、メジャー時代より全然忙しくなっちゃって、まだ当分歌う羽目になったのは君らのせいだ!というMCがあり。
A:それを受けて、ファンの往生際の悪さを揺り起こしたのはシノハラの歌なんだから、なんだかんだ言って結局あんたのせいだ!という意見あり(笑)。
Q:なんかこの罵り合いながら愛し合ってるかんじがいいんですよね(笑)。

A:去年秋の時は、久々に大阪やれた、今回は初EAST、まだすこし魔法使ってますけど、これからどんどん、初めて、は無くなって行くわけで、純粋にライブとして問われるようになって行くんじゃないかな。
Q:改めて気を引き締めて。
A:続けて行きたいと思います。

※02.6.15updateノーコンエッセイ第52球後編、02.4.21ワンマンに関する自問自答より抜粋。初のEASTワンマンを終えて。

Q:今気持ちに響く歌ってなんですかね。
A:全然関係ないけど「夜間飛行」。出会ったその瞬間にさよならが見えたとしてもってとこ。
Q:くり返す愛の言葉を。
A:あの2日間は信じましたねえ。いい気分で、信じちゃいました(笑)。
Q:今はまた信じてないんですか(笑)。
A:たまにでいいんですよ(笑)、あのライブと一緒で。年中あんなことやってたらお互いバテますから(笑)、たまにしっかり話し合って、大丈夫?大丈夫?よし、じゃ、また行ってくんねってかんじで。次に戻ってきた時には誰もいないかもしれないけど、まあそれはそれで。たまにでいいんですよ。嘘でもいいの。でも信じられた瞬間があれば、またひとりになれるんですよ。

※03. 8.16updateノーコンエッセイ第57球より抜粋。結婚・出産を経て、03.4.20,21デビュー10周年記念WEST2daysを終えて。

 思うように声が出なかったこと、仙台公演が行われた4月11日の晩、好きだった作家の鷺沢萌さんが亡くなっていたこと。
 2004年の春を締めくくったワンマンライブの記憶は、深く静かな喪失の感触。

 衰えを突きつけられたという思いで見上げた満開の桜を、私は一生忘れないだろう。

 新たなジレンマとともに、私は今年もO-Eastのステージに立つが、腹は、括っている、つもり。

※05.4.20updateノーコンエッセイ第59球act3〜晩春〜より抜粋。05.4.23のO-EASTワンマンを控え、04年春の、10年ぶりの仙台単独公演と新装オープンのO-EAST初ワンマンを振り返りつつ。

 ひとの価値はどこにいるかで決まるのではなく、そこで何をするかで決まるのだと思う。

※05. 9.23updateノーコンエッセイ第60球より抜粋。7年ぶりのバンドでのワンマンを控えて。

2月12日(日)晴れ
ライブ終わってBOXXを出たら、いい月が見えた。もろもろひっくるめて、とにかくありがとう。いい経験しました。で、ちと飲み過ぎです(笑)。

※06.2.12付仁義なきかーかん日記。初のライブDVD用BOXXでのシューティングライブを終えて。

 ライブもバンドでやろうと思ったのは、弾き語りでもバンドでも、もうどっちでも関係ないと思ったからである。だとすれば、圧倒的に表現の幅が広がるバンド編成で、と思うだけである。歌だけでもない。演奏だけでもない。双方がお互いに耳を傾け合って初めて生まれる、音楽。去年の秋の久々のバンドライブで、じわりと沁み込むように思った。ひとりではない。やっと、私は、ひとりではない。

 ニンゲンはいつだって、見たいものだけを見ようとする勝手な生き物だ。若い時は若い時のように。年を取れば年を取ったように。私は今年、40になる。

 自分のことをあまりボーカリストだと思ったことがない。でも、何が好きかと聞かれれば、やはり「歌うこと」と答える。

※06.4.20updateノーコンエッセイ第62球より抜粋。バンドで初のO-EASTワンマンを控えて。

 radiant heat=放射熱。ある物体から放出され、他の物体に吸収されてその温度上昇に使われる熱エネルギー。私はこのタイトルを、不遜にも自分が熱を発するというつもりで付けた。しかしあの日実際に熱を発したのは、私と私の歌を取り巻く人々の思いだった。その熱が私をあたため、歌わせた。うたかたの春が、またひとつ、去った。愚かな私は、いつだって、終わったあとで気付くのだ。

※06.5.2updateノーコンエッセイ第63球より抜粋。バンドで初のO-EASTワンマンを終えて。

 ロアルド・ダールは、坂道をさっそうと自転車で駆け下りて行った上級生に憧れた話をどこかに書いているらしい。多分誰もがいちどは、焦がれるように願うのだろう。自転車に乗れることでもなく、坂道をスピードに乗って駆け下りることでもなく、あんな上級生、になりたい、と。理想と現実、と言ってしまえば身も蓋もない。なれない、と知って行くことで、きっと人は、未来に近づくのではなく、自分自身が未来であることに気付いて行くのだ。それで希望をなくすことも、希望に満ちることも、両方ある。

※06.10.28updateノーコンエッセイ第66球より抜粋。誕生日前夜、30代最後のワンマンを控えて。

 今年の春のワンマン、本編をインディーズ以降の曲のみで乗り切った。結局メジャー時代の曲やったアンコールがいちばん盛り上がったじゃんと言われればそれまでだが、それは私にとってとても意味のあることだった。 インディペンデンスとなってからの日々は、私なりのささやかな過去を踏まえた上での、なつかしくならないための闘いだったと思う。今更スタンディングで爆音のライブをやるのも、どんなに無理をしても年1枚のリリースを死守するのも、そのひとりよがりな闘いのうち。そしてそれは、多分来ないとわかっていても、来たるべき日に備えるため。見ている人にとってシノハラミヤコは記憶の中の点でも、私にとってシノハラミヤコは日々連なり脈打ち続ける線なのだ。

※06.11.23updateノーコンエッセイ第67球より抜粋。30代最後のワンマンを終えて。

12月24日(日)晴れ
歌詞置いたけどいっぱい間違えて反省、でもあのメニューをとにかく歌い切れたことはうれしい収穫。ありがとう。星がお土産です。

※06.12.24付仁義なきかーかん日記。イブのワンマンを終えて。

4月18日(水)雨
花びら一枚ほどの一夜のために、桜何本分もの思いが咲き尽くし、散り尽くす。みなさん、ありがとう。本番、がんばります。

※07.4.18付仁義なきかーかん日記より抜粋。春のO-EASTワンマンを控えて。

 「歌は、やめる理由がないからね」
 212の打ち上げで、SIONが軽やかにつぶやいていた。
 泣きながら理由を探したくなる時がある。
 とっくに突きつけられているのに見て見ぬふりをしているだけだと言う声に、耳をふさぎ切れない時がある。
 すべてを知って、それでも希望を捨てない。SIONも、きっと。
 胸を張って約束は出来ないけど、来年もまた、散り誇る桜に歌を重ねたいと、心から思っています。

LAST UP DATE 2007.4.20