| Extra Volume |
| 曲のタイトルでさえしょっちゅう煮詰まっては、ええいとばかりに日付をつけてしまう私である。アルバムタイトルがすんなり決まるはずがない。レコーディングの最中から、ヒマさえあれば「ど〜しよ〜」とぼやいたり辞書をめくったりしていたが、『新しい羽根がついた日』を経て、着陸、というようなイメージはあったものの、なんとしてもピンと来るフレーズが思い付かない。ああんもう。ついにレコーディングは終了。最終締め切りのマスタリング前夜、う、う、そうだ地図っていうイメージはどーなんだ!?と苦し紛れに和英辞典を開くと、飛び込んで来た例文。bird's-eye
view:鳥瞰図。ビンゴ。いただき。 ちなみにプロデューサーの中山氏は、基本・原点という意味で、「basic」というタイトルを提案していた。篠原美也子を古くから知る中山氏は、このアルバムの曲こそが、シノハラが元々持っていた一番いいものが正しく進化した形で、堂々と原点回帰を謳うべきだと言ってくれた。私は彼に誉められたことがほとんど無かったので、ひどくうれしかった。 01『夜間飛行』 サン=テグジュペリの同名の小説が好きで、いつかこのタイトルの歌を書きたいと長いこと思っていたのだが、去年、2001年の夏、やっと実現。『新しい羽根〜』がリリースされ、春のワンマンも無事終え、そろそろ恐がらずに色んなものを解放してもいいのかなと思っていたのかもしれない。書きながら、サビの、ほどいて、にこだわった記憶がある。 幸い好評で、去年秋のワンマンでは1曲目を務めたが、レコーディングするにあたっては中山氏の指示で歌詞を増やしてメロディラインを整え、それに伴ってはまりの悪い歌詞を直したので、実はずいぶんお色直ししてある。ピアノのバッキングも、ライブで発表した時はゆったりしたものだったが、一転してスピード感にあふれるバッキングになり、レコーディングの現場では大感激だった。まあ好みもあると思うが私はボーカルエフェクトも好きなので、このリピートエコーは気に入っているし、緊張感が高まる感じで歌にも合っていると思っている。転調のところのリバースエコーも、ありがちだが、ピアノと歌しかない世界でやられると「ぶらぼー」ってかんじ(笑)。ちなみにこの曲と『流星の日』のボーカルは、ディストーションで少し歪ませている。 02『満天』 ライブで発表したのは2001年の5月だが、メジャーをクビになる頃に書いた曲で、いわゆる掘り出し物シリーズの中のひとつ。『夜間飛行』と同様、これもタイトルが先にあり、満天の星空を映したような街、のイメージは、当時のレコード会社があった赤坂あたり。 私には珍しい流暢なメロディラインがミソで(笑)、スタッフたちによれば、シングルにするならこれ、だそうな。 03『ここはなんてあたたかくて』 最初の選曲ミーティングの時にはまだなかった曲で、中山氏に「前回の『HERO』みたいな、ばりっとしたやつ欲しいよね」と言われて、よおし!と一気に書いた歌。この時勢いで『pain scale』と『kissing』も書いてしまい、選曲レースはもぐら叩き状態に。結局は書き下ろし3曲が並み居る強豪を退け、見事当選。 この歌を聴いて、「シノハラはまたどっか行っちゃうのでは!?」と心配された方もいたようだが、居心地が良くなると居心地が悪くなるのは、私の人生観であるのでご心配なく(笑)。ただ、ありえないだらけの2001年を過ごし、百歌というイベント自体が良くも悪くも煮詰まりつつあるなあと思う中で、別にあたしはどこにも属してるわけじゃないよ、という気持ちをはっきりさせておきたかったというのはある。甘んじない、的な意味で、前向きに捉えてもらえれば幸いである。 五十嵐くんが素朴で力強いピアノを弾いてくれて、感謝。 04『流星の日』 これを書いた気持ちに関しては、ノーコンの47球に詳しくある。 何も変わらないとしても、どうなるものでもないとしても、忘れないこと、覚えていたいと願うこと。 杉山さんピアノ渋過ぎ(笑)。こういうビミョーな跳ねっぷりはほんとコピーするの難しいのよお(泣)。 05『kissing』 なんかピアノをテキトーに叩いていたらイントロのパターンが出来て、それに合わせて鼻歌を歌っていたら出来た曲(笑)。こういう熱唱しないバラード、ありそうで無かったなあと思いつつ。今回ピアノを録るにあたっては基本的にクリックを使ったが、この曲だけは杉山さんに思い入れたっぷりに自由に弾いてもらった。一応気分は坂本龍一「戦メリ」ってかんじ(笑)。ボーカルも、じゃちょっと合わせて歌ってみよっか、と歌った仮歌が、初々しさ重視でそのままOK。 「I'm just kissing you」は、「ただあなたにキスをしているだけ」というかんじであまりロマンティックなニュアンスは無いのだが、語呂の良さと、むしろそのクールさが雰囲気あるかなと。 06『pain scale』 ペインスケール。私はあるスポーツノンフィクションを読んでいて見かけたのだが、医学用語で、患者の痛みを数値化して経過を見るような時に使われるらしい。ある日を基準として、昨日より今日はどれくらい痛いか、どれくらい痛くないか、というように。すぐに、あとどれくらい?、というフレーズが浮かんで、『ここはなんて〜』を書いた勢いの中で一気に出来上がった。わずか3分13秒、アルバム中最も短い曲だが、悲しみの幅、は一番広く、せつなさのわけ、は一番深いかもしれない。 07『街灯の月』 ある時、地下鉄を降りて、地上への階段を上っていたら前を行く人の踵がやたらと目に入って、目を上げると背中がたくさん見えて、地上はもう夜で、曇っていて、でも街灯がお月さまのようで。ただそれだけ。喜びでもなく、悲しみでもなく、ただそれだけの、歌である。 ボーダーライン上で惜しくも落選した曲について。『30's blue』『約束』『尽きせぬ思い』『月と坂道』『ダイヤモンドダスト』『422』『冬のスタジアム』『きれい』等々。全体のバランスとCD化にあたっての完成度を考慮し、プロデューサーの中山氏と私とで話し合って判断した。歌とピアノのみという編成で最大に力を発揮するものを、出来る限り誠実に選んだつもりである。ライブでのリアルタイムの聞こえ方が必ずしもCDという形に収まらない場合もあるということを、どうかご理解頂きたい。これからも続いていくライブに於いては、彼らはもちろん大事な戦力であり続けるし、いつかパッケージされる機会が訪れるかもしれない。 歌は平均するとどの曲も2回くらいしか歌っていない。切り貼りもほとんど無いので、ある意味荒さもそのままである。『新しい羽根〜』の曲たちは、リリースしたあとライブで歌いながら育てたという感触があるのだが、今回の曲に関しては、書いた時点で、こう歌えばいいんだ、とわかっていたものが多かった。レコーディング直前に風邪で体調を崩すという大失策をやらかし、歌入れ最終日に6曲残っているというとんでもないことになりながらあっさりクリアできたのはそのおかげで、尚且つ中山氏の的確なボーカルディレクションのおかげでもある。音程よりもニュアンスを、上手に歌うより届くように歌うことを彼は大事にしてくれた。 『海になりたい青』から『いとおしいグレイ』に続く迷い無き第1期。チャレンジに目覚めた『河よりも長くゆるやかに』。『Vivien』の試行錯誤。『magnolia』の混乱。再生への自信と不安、まだかすかに反発し合う過去と現在に揺れていた『新しい羽根がついた日』。半信半疑で飛び立った空から見えたものは。 答えなど、無いのだ。 |
last up date 2002.4/20
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予定は、未定..