from Miyako Shinohara


Extra Volume

シノハラミヤコのノーコンエッセイ
「行き先はボールに聞いてくれい」第37球

緊急レポート
ラグビー日本対ウェールズ戦


 みなさ〜ん、あと少したつと毎日こうですよ〜、と、夏が大々的に予告編を打ったような2001年6月17日。ラグビー日本代表対ウェールズ代表の試合を目撃するべく、私は秩父宮ラグビー場に向かった。午後1時少し過ぎ、地下鉄銀座線の外苑前に着くと混雑した駅構内は既に微熱状態にあり、階段を昇って地上に出ると、強い陽射しと相俟って一気に体温が上がっていくのがわかった。あまりの人の多さに一瞬、あれ、野球かサッカー重なったのかなと思う。外苑前駅からスタジアム通りと名付けられた通り沿い、一番手前に秩父宮ラグビー場、隣りに神宮球場、その奥には国立競技場と続き、ラグビー、野球、サッカーがいっぺんに行われる日がごくたまにある。そういう場合当然、一番手前の門をくぐる人数が一番少なく、フェイスペインティングのオレオレ軍団や、早くもメガホン片手に張り切っている親子連れの背中を見送りながら、いつもひそかに唇を噛み締めていた私だった(第一、神宮球場、国立競技場は知っていても、秩父宮、というと、「それどこにあんの?」と聞かれる確率はかなり高い)。
 でも、この日は違った。

 いつものようにまずは缶ビールを仕入れる。何かスポーツの試合が行われる時はいつも、本職(?)のテキ屋に負けじとばかり、スタジアム通り沿いの飲食店は一斉に即席売店と化し、それぞれ店先にテーブルを並べて、弁当やら飲み物やらを売る。秩父宮の売店の生ビールは500ml600円で、東京ドーム(800円)のようにあこぎにぼったくったりしないが、それでも外で買ってった方が安いことは安い(どのみち夏はぬるくなってしまうので、私は1缶か2缶しか買わないが)。ただこの時気を付けなければいけないのは、店によって、350缶300円、500缶400円のところと、350缶250円、500缶350円のところがあること。ふん、せこいとでもケチとでも何とでも言ってくれ。大量に飲む人間にとっては、こういう部分のコストパフォーマンスが大事なのさ。ともあれこの日も350円の500缶を買おうといつものおっさんの店で足を止めクーラーボックスを覗き込むと、なんとモルツしか残っていない。私はラグビーのサントリーチームは大好きだがサントリーのビールは信じていないので、「モルツしかないのお?」とおっさんに聞いてみた。するとおっさんが、「あっおねーさん、モルツうまいよっ。みんなえ ーって言うんだけどさ(やっぱりそうなんだ)、うまいって。飲んでみ、絶対モルツもうまいから。ほらっ紙コップも付けちゃうからさっ」と熱心に言うので、思わず吹き出しながらモルツを買う。
 いつもなら試合が始まってからだって、クーラーボックスの中は、ラガー、一番搾り、スーパードライなど色とりどりなのだ。
 でも、この日は違った。

 大渋滞の歩道のあちこちで、ダフ屋が喧しく叫んでいる。「余りないー?余り買うよー」「券ない人あるよー割引するよー」。ためしに聞いてみる。「A自由」「A自由?3000円」。ふざけんな。A自由席定価は2000円である。時刻は午後1時15分。キックオフまであと45分。ま、もう割引してたらそれはそれでサビシイよなと思いながらスタジアムを目指す(冬だとこのへんで『冬のスタジアム』を口ずさむ)。人波が軽くうねるように秩父宮の門に吸い込まれて行く。反対の千駄ヶ谷方面からも続々と人が歩いてくる。なんともすがすがしい気分で当日券売り場へ。窓口は通常2箇所だが、この日はもう1箇所用意されており、それでもかなり混雑している。指定券はすべて売り切れ、A自由も残りわずか、と係員が拡声器で告げている。やっぱり前売りを買っとくべきだったかなと後悔し始めた頃、あと3、4人で私の番というところでA自由バックスタンド分が終了。あとはメイン自由と一般自由のみ。まだかなりの人が並んでいる途中で、ちょっとどよめきが起きる。ブーイングと言うよりは、驚きの。
注・秩父宮ラグビー場には、サイドラインを見下ろす格好で向き合うメイン及びバックスタンド、各エンドライン側の一般自由席と呼ばれるスタンド、計4つのスタンドがある。試合によって席の区分は多少異なるが、メインスタンドは両端の数ブロックを除いて指定席。放送席やVIP席などもあり、チーム関係者もここ。前はよく双眼鏡で平尾誠二を探したもんである。ひさしがあり方位的な条件も重なって日陰になるので、夏や雨の時は助かるが、冬はどんなに天気がよくても足元からしんしんと冷える。その点バックスタンドは日当たり良好。天気さえ良ければ冬でもぽかぽかあったかいし、両端は立見席だが、ブロック指定になるセンターライン付近の一部を除いてあとは全部自由席なので人気がある。屋外スポーツ観戦を満喫したいなら、絶対バックスタンド。一般自由席は、試合の全体像を見るには適さないが、ゴールポスト越しに遠近で見るプレイはまた一味違って楽しい。ひいきのチームが攻め込む方に合わせて、トライを大迫力で見るべく前後半で移動するという手もある。ちなみに秩父宮は、国立のような総合競技場ではなく単なるラグビ ー場なのでトラックがなく、スタンドのすぐ目の前が芝生である。
 国立、神宮、秩父宮とあって、一番「売り切れ」という言葉に慣れていないのは間違いなく秩父宮に足を運ぶ人たちである。シーズンの最後を締めくくる日本選手権でさえ、バックスタンド売り切れなんてめったにないのだ。
 でも、この日は違った!

 梅雨の晴れ間のまっすぐな陽射しの中、外苑秩父宮ラグビー場で行われた日本代表対ウェールズ代表戦には、2万3千の観衆が詰めかけた。「楕円球の聖地」と称され、一昨年のW杯の開催国でもあったウェールズから代表チームが来日するのは26年ぶりのこと。日本代表のテストマッチに2万を越える観衆が集まったのは、'89年のスコットランド戦以来だという。私が足を運んだ中で秩父宮にこんなに人が入ったのは、おととしの早慶戦以来だろう。1週間前の第1テストで10‐64という大敗を喫したとは言え、ウェールズ代表来日シリーズ最終戦となる第2テスト、おりしもサッカーコンフェデレーションズカップで日本代表が準優勝と健闘したばかりでもあり、同じフットボールながら常に日陰の身を余儀なくされてきたラグビー式フットボールファンたちの闘争心は、いやがうえにも掻き立てられている。何かやってくれそうだ、いや何かやって欲しいという期待で、スタジアムは普段はなかなか埋まらないエンドライン側の一般自由席にも立ち見が出る盛況ぶりとなった。

 一般自由で見るのも一興だが、まあせっかくなのでメイン自由を購入し、いざスタンドへ。どこのスタジアムでもそうなのだが、売店やトイレや喫煙所の並ぶ通路からスタンドに出る瞬間を、私はほとんど愛している。薄暗いゲートを抜けて、光と解放の中へ。この時点でいつも既に感動している私は多分馬鹿である。秩父宮の場合、バックスタンドに行くには一般自由席の前の通路を通るのだが、そこから見えるグラウンドの風景も私は死ぬほど愛している。いつもしばし立ち止まって、芝生の匂いに陶然とする。そして、私の前世はあのゴールポストだった、いやそれともスコアボード?などとわけのわからないことを考えたりする。もうこれは相当花丸印の馬鹿である。
注・私はそれぞれのスポーツそのものも好きだが、それにまつわる風景も同じくらい好きなのだ。たとえば、競馬がスポーツかどうかはまあ置いといて(笑、でも馬たちにとって競馬場は紛れもなくスタジアムだよね)、府中競馬場パドック脇のトキノミノル像、1コーナーを臨む芝生席から見る西日の差し込むターフ。私と競馬仲間たちが、駅の階段を降りながらいつも愛情を込めて「あー馬クサイ」と言い合う、モノレールの大井競馬場駅を降りたとたんぷ〜んと漂ってくるケモノの匂い。東京ドームの回転ドアとブルーのシート。後楽園ホールのロビーの片隅、あの何とも言えずダーティーな喫煙所とそこから見上げる歴代チャンピオンの写真。不思議ななつかしさといとおしさで、思い出すと鼻の奥がつーんとする景色の数々である。
 時刻は1時半。キックオフまであと30分。花丸馬鹿はメインスタンド向かって左側の自由席ブロック中段、22mラインからややセンターライン寄りの結構グッドな位置に空席を見つけてもぐり込む。こういう時単身は便利である。秩父宮の座席はそれこそVIP席を除いてすべてベンチシートなので、一応一席分ずつ区切りはあるものの、ひとりぐらいならなんとでもなっちゃうのだ。席に着き、まずは試合前のざわめきにモルツで乾杯。そして何人かの友だちに、携帯からメールを打つ。これはもうほとんど恒例。「日本代表対ウェールズ代表戦、間もなくキックオフ!」とかなんとか。友だちの苦笑する顔を思い浮かべながら打ちまくる。私が携帯メールの達人になったのは、このスタジアム速報メールのせいかもしれない(笑)。

 やがて拍手の中選手たちがグラウンドに姿を現し、思い思いに体をほぐし始める。輝くような緑の芝生の上に、日本代表の赤と白の横縞に桜のエンブレムのジャージィと、ウェールズ代表の「レッド・ドラゴン」と呼ばれる所以でもある深紅のジャージィがあざやかにちりばめられる。気温は25度を優に越えているだろう。タフなジェントルマンたちの楕円球をめぐる陣取り合戦が、ほとんど真夏の陽射しの中いよいよ始まろうとしている。

 多分5月の日韓戦からだと思うが、慶應大ラグビー部の上田昭彦監督による場内解説が入るようになった。試合前のセレモニーの案内、スターティングメンバーの紹介、試合が始まってからはペナルティの解説などが、スタジアム内に設置されたスピーカーを通して行われる。元々秩父宮ではおねーちゃんのアナウンスがあったが、多分単なるアルバイトと思われ、ペナルティのコールなど、審判の笛が鳴ってもう次のプレーが始まった頃済ました声で「神戸製鋼、オフサイドです」などと言われて、コケそうになることがよくあった。そこへ来るとラグビーに関しては玄人中の玄人上田監督、「日本代表ノットリリースザボールです。倒れたあとボールを放しませんでした。ウェールズ代表にペナルティキックが与えられます」といった具合に、前後のプレイも含めて即座に解説してくれるので、私のようにまだまだ素人に毛が生えた程度のラグビーファンにはありがたいことこの上ない。上田さんは昔フジテレビでスポーツキャスターやってたくらいだから、しゃべるの上手だし。ラグビーは体を直接ぶつけ合ってもつれ合う場面の多いスポーツなので、細かいルールがあるし、慣れないとなかなか反則は 見分けづらいのだが、このようにていねいに説明してもらえれば「えーっラグビー?ルールわかんないもーん」というおねーちゃんでも気軽に誘えるってもんだ。上田解説に加え、応援旗やメンバー表の無料配布、スタンプラリーなど、向井新監督になって直後ということもあるのだろうが、こういうことは簡単そうに見えて実はなかなか出来ないことだと思うので、宿沢強化委員長始め協会も色々頑張っていると見た。今後もアピールを兼ねたサービスを期待したい。ただひとつだけ。場面場面で音楽を流すのはいいのだが、選曲のセンスが何というかその(笑)。終了後の、クイーンの「♪うぃーあーざちゃーんぴおーん」はまあいいとして、ウェールズ代表の入場の音楽がなんでヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」なんだよ(笑)。ウェールズ出身のバンドとかあるのか知らないけど、せめてヨーロッパのバンドにしようよ。盛り上げたいのはわかるけど、ハーフタイムにスプリングスティーンとか流すのやめましょうって。ラグビーに関してはアメリカだって弱小国なんだから(笑)。

 午後2時、日本代表のキックオフで試合開始。いきなりのミスキックに試合開始の笛で沸き起こった大歓声が溜め息混じりのどよめきに変わる。しかし5分、WTB栗原のPGで、先制はジャパン。韓国戦でも思ったが、今季からサントリーに入った栗原は慶應時代何度か試合を見てるはずなんだが、プレイスキックの名手とは知らなんだ。ジャパンのプレイスキッカーといえばトヨタの広瀬がすぐ思い浮かぶが、小さい体を目いっぱい使って足を高々と振り抜く広瀬のドラマティックなフォームとは対照的に、栗原の蹴り方は力を抜いてちょこっと当てるかんじ。でも結構決まるんだこれが、難しいコースでも。しかしまんまと先制されて「レッド・ドラゴン」が黙っているはずもない。15分過ぎから連続トライを決め、ウェールズ19-3とリードを広げる。攻め込まれ続け、防戦一方のジャパンに、ああやっぱりかあ、と、負け慣れし過ぎ症候群(阪神ファン根性とも言う)が首をもたげ始め、スタンドの雰囲気がゆるみかける。一週間前のなすすべない大敗が脳裏をよぎった人も多かっただろう。しかし、この日のジャパン一番の見せ場は、前半終了間際の約10分間にやって来た。

 豊かなスピードと高いパス能力を持つSHとして、「超高速ラグビー」を謳った東芝府中の日本選手権3連覇(この時の東芝府中の監督が、現ジャパン監督向井昭吾氏)に貢献した村田亙は、'99年31才にして日本人初のプロ契約選手として、フランス2部リーグのアビロン・バイヨンヌに移籍し、レギュラーを勝ち取る。一方神戸製鋼およびジャパンの若き司令塔として名を馳せたSO岩渕健輔は、ケンブリッジ大に留学したあといったん神鋼に戻るが、'00年イングランドの名門サセランズとプロ契約。各国の代表レベルの選手がひしめき合うチーム内で、レギュラー争いにしのぎを削っている。私がラグビーを見始めたのは、'97年東芝府中3連覇達成の年からで、ラグビーに関して書かれたものの中でこの2人について読んだことはあったが、残念ながら実際にそのプレーを目に焼き付ける機会はないままだった。代表にしても、平尾ジャパン時代は大胆な外国人選手の起用が試された時期で、村田、岩渕共に控えにまわらざるを得なかったという状況のせいもあったかもしれない。向井新体制のもと、満を持して代表に呼び戻されたこの2人。韓国戦では出番がなかったが、今回のウェールズ戦では2人とも スターティングフィフティーンに名を連ね、多くのファンや関係者の注目を集めることとなった。もちろん、私も含めて、である。

 あ、と思った時、村田は既にウェールズディフェンスを置き去っていた。前半33分、敵陣10mライン付近で得たPKから、173cm74kgの背番号9が電光石火の速攻を仕掛ける。「ピーからゴー!」誰かが叫ぶ。審判の笛からの素早いリスタートを意味するこの言葉は、超高速ラグビーを目指した東芝府中の合言葉だった。サポートも見事に反応し、最後はFL久保のトライ。地響きのような歓声。GKも決まってスコアは19-10。直後、相手のキックオフから今度はオープンに展開し、司令塔岩淵からパスをつないでゴール左に駆け込んだのはベテランWTBの増保。流れるようなスピード。正確なリズム。しかも続けてふたつ。満席のスタンド総立ち。秩父宮が揺れていた。揺れていたと思う。いや絶対揺れてたって。GK決まって19-17。更に前半終了直前、栗原のPGが決まって、スコアはついに19-20。

 あの瞬間、おそらく秩父宮のスタンドを埋めた多くの花丸馬鹿が夢を見た。ラグビーなんてマイナーなスポーツに恋をしてしまったばっかりに味わう羽目になったせつなさや失望の数々。どうせ駄目だと開き直りながら、それでも小走りにスタジアムを目指した日々。やさしくされて、いい気になって、張り切り過ぎて馬鹿みたい♪(from『夢を見ていた』)と、何度も我が身の愚かさを嘆きながら、時折こぼれ落ちる流れ星のような輝きにほだされて、つないで来た思い。幸福なハーフタイム。束の間だと、多分みんなわかっていたと思う。暑さでつい飲み過ぎたビールの酔いがさめる頃には、再び報われぬ思いを持て余しているに違いないことを重々承知の上で、誰もがうたかたの恋の成就に頬を上気させていた。私はメールを打ちまくり、実家にまで電話をし、勢い余ってどさくさ紛れに好きな男にも電話をかけた。これはだいぶスローフォワード(笑)。でもいい。だって今はまだジャパンが勝ってるんだもん。

 喜びも悲しみも長くは続かないもの(笑)。来日シリーズ第1戦では、サントリーのフィットネスの高さに加え、暑さと調整不足で後半バテバテになったウェールズだったが、この日は、前半攻め込まれて消耗したジャパンが先に力尽きた。開始4分、逆転のトライを許すと、15分から5分間で3つのトライを献上。終了直前、栗原とのコンビで、初キャップのFB小野澤が意地のトライを決めるが、終わってみれば30-53。花丸馬鹿どもの夢はあっけなく覚め果てた。「瞬時の大量失点はハプニングではなく実力の証明である」とNumberで藤島大さんは書いている。健闘したとは言え、結果的には主力抜きのウェールズに完敗、である。少し前に見た、サッカーのフランス対日本の試合と同じ印象だった。場面場面で光るプレイはあるものの、ほとんどは相手のミス待ちで、そのミス待ちの間に自分たちがイージーミスをしてしまうというパターンも、追いすがった!と思いきや、簡単に突き放される余裕のなさも。フィットネス、パスの精度、サイズに対抗するためのスピードなど、言われ続けてきた課題はまだまだ残されたままだ。ま、私は単なる花丸馬鹿で難しいことはわからないので、そういうことは専 門家に任せよう。ただ、この試合でひとつだけ印象に残ったのは、ウェールズチームのブレイクの多さだ。「走る格闘技」と呼ばれるラグビーというスポーツ、ルールで認められている範囲だけでも、大男どもがトップスピードでぶつかり合い、相手を引きずり倒してボールを奪う競技で、脳震盪は日常茶飯事、審判の目を盗んで踏んだり蹴ったりは当たり前である(ゆえに、細部にわたって厳しいルールが設けられている)。サッカーと同じく誰かが傷むと、ボールがアウトしたタイミングでトレーナーがフィールドに入ったり、ひどいと担架で運ばれたりとなり、その隙に他の選手は水分を補給したり戦術の確認をしたりするのだが、この日のウェールズチームは、ちょっと激しい当たりのあとは必ず誰かが大の字になったり、座り込んでトレーナーを要求したりしていた。もちろんその間日本の選手も休めるので、有利不利ではないのだが、こいつら暑さの中、したたかに自分のペースでやってんなーと妙に感心してしまった。サッカーでよく言われる「マリーシア」(ずるがしこさ、とでも言うのだろうか)ってこれかなあ。プレイ以外のそんな部分でも、秩父宮のフィールドを支配していたのは明らかに ウェールズで、世間知らずの花丸馬鹿は、まだ見ぬカーディフ・ミレニアムやトゥイッケナム(ヨーロッパのラグビー場)でのプレイに、ほんの一瞬思いを馳せた。

 イングランドのサセランズで来季もプレイする岩渕、フランスでの2シーズンを糧にヤマハに入社が決まった村田、ウェールズ選手に引けを取らない運動能力で堂々たる存在感をアピールしたNo.8斉藤、FWの要坂田も健在、まだ若い栗原、小野澤、月田もいる。明るい材料もある。

 ラグビー場とボクシング場は似ている。組織的な応援団がいない。玄人の容赦ない野次が飛ぶ。選手たちのプレイがタクトとなって、大歓声と静寂が緊張感の糸の上で美しい旋律を奏でる。楕円形のマエストロ。強いから好きになったわけじゃない。好きになった人が強くなりたいと思っているから、応援しようと思うだけだなどと、人影がまばらになり始めたスタンドで私は感傷に耽る。昼間のビールはよく効く。スタジアム通りの即席売店はとっくに店じまいして、夜を迎える準備をしているだろう。

 ああしんど。ラグビー協会に感謝して欲しいもんだわさ。

last up date 2001.7/8
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予定は、未定..

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