シノハラミヤコのノーコンエッセイ |
| 「行き先はボールに聞いてくれい」第26球 |
| 新春新世紀スペシャル 『ヒロシとミヤコの言いたい放題』後編 |
| スン・どしたの? シノ・いや、バッテリーがね、心もとないんですよ。(立ち上がってまわりにコンセントがないか探す音)電源ないし。 スン・じゃ、あわてて喋るか! シノ・うん!じゃ次、CD!ジャケット作りました!進行シノハラミヤコで、撮影しました。大変皆様方には、ご協力と、愛を頂きましたっ。 スン・いや、これはね、高くついたかもよ。なーんつって(笑)。 シノ・うひゃー、やばいっ。 スン・(爆笑)やばいっ。 シノ・不良債権かもよ(笑)。 スン・まあ、それも含めてね(笑)。 ![]() かわいらしいウエイトレスの女の子が、ワインを持ってきたついでにスントーさんのメガネを「かっこいいですね!」と誉め、自分でデザインしたメガネだったせいもあって、スントーさん満更でもない様子。しばしウエイトレスちゃんとお喋り。助っ人で入ったバンドが、今度なんかのオーディションを受けるそうだ(彼女はベースだそうだ)。「うひゃあそれだけですう、お邪魔しましたあ」と明るく去って行った。幸あれ〜。 スン・でも、今CDづくりもそうだと思うけど、言ってみればプロの時代じゃなくて、誰でも出来る時代なのよ。グラフィックデザインだって、僕も苦節25年ぐらいやってるけど(笑)、このキャリアが例えば賞を獲ってたとしても、今何が出来るかっていうことで言うと、半年間デザイン勉強して、たまたまラッキーなデザイナーがいたとして、それが旬だとすればそっから見た僕ってただのベテランに過ぎないんだよね。 シノ・ふーむ。 スン・だから僕は、過去のことよりも、今旬であり続けることが問題なわけ。自分のデザインの権威になりたいんじゃなくて、そういう旬な人達に勝てるかどうかってことだけなの。だから今回も(『新しい羽根が・・・』に)ただ仲のいい人で参加したわけじゃなくてさ。最初の打ち合わせの時言ったと思うんだけど、僕はアートディレクターとして、例えば管野秀夫をキャスティングした時に、今ほんとに彼に撮ってもらうべきかどうかを強気に考えた方がいいって言ったと思うのね。 シノ・うんうん。 スン・あたしはこうなのよ!管野秀夫に貸しはあるから(笑)撮らせてやるけれども、次はないかもよ!(笑)っていうぐらいの気分でいて欲しいと思ったわけ。 シノ・ハハハハ。 スン・弱気の時に発するパワーと、強気の時に発するパワー違うから。 シノ・そうですよねえ。 スン・レコーディングにしても、あたしはちゃんと歌うから、ちゃんと録らなかったら、この竹刀でひっぱたくわよ!みたいな(笑)。 シノ・(爆笑)そうね!その勢いは大事。 スン・そう、それがやっぱりモノ作りの鉄則で、まあ、ちょっとしたコツは違うと思うけどね。映画撮る人が気合いだけじゃ撮れないし、デザインだって段取りで、間に合うかどうかっていうのが一番でかいし。 シノ・うん、でもわかる。今回のレコーディングも、要するにそんなにたくさんお金無い中で色んな人に来てもらったりしたから、とりあえず「すいません!無理言って!」っていうところから挨拶は始まって行くんだけど、何て言うのかなあ、グラフィックチームもそうですけど、ほんとのプロって、じゃあ今回ギャラがいくらだからこの仕事、こっちは安いからこの仕事って出来ないじゃないですか。 スン・まあね。 シノ・あたしだってそれこそ、メジャーだからここまで歌って、インディーズだからここまでしか歌わないとか・・・ スン・そういうのないよね。 シノ・ないでしょ?今回ギャラないから鼻歌とか(笑)。 スン・ハイ、ここまで!っていうのもないよね(笑)。 シノ・今日は一番だけ、とかね、ないわけだから(笑)、そういう意味で、来てくれた人達もみんなプロだったから、やるからにはしっかりわがまま言わないと逆に失礼だって思ってた。 スン・うんうん。でもそれはそれで、今回はインディーズだっていう強みもさんざん使った方がいいと思うよ。 シノ・うん、さんざん使った(笑)。 スン・今回さーお金ないからギャラ払えないんだけど一所懸命やってねー、その代わりあんたの一番好きなことやってくれていいからさー。でもさ、そう言いながら、やっぱこっちの方がいいねえなんて言って自分の手の内にしちゃうっていうか(笑)。 シノ・(爆笑)そーなんですよお。 スン・そういう駆け引きって言うかさ、そういうのないと面白くないよ。打算のない友情ないって(笑)。宮本武蔵、佐々木小次郎みたいなさ。ま、最後どっちがカッコよく死ぬかっていう武士道の問題もあるのかもわかんないけど。 シノ・そうね。 スン・だから、お金のないときはお金のないときで出来ちゃうノウハウも必要だけど、やっぱビジネスで考えると、いかにお金を引き出せるかっていう楽しみって別にあるんだよね。最高の機材で、お金かけて、この人にやってもらいたいっていう人に「こっちゃ来い!」って言う時の快感てあるわけよ。その時だけでもいいからナンバーワンっていうさ。そういう両方がないとつまんないと思うよ。 シノ・わかるわかる。でもレコーディングも今はハードディスクが普及してて、あたしも今回初めてプロトゥールス使いまして、要するに今までのマルチっていうテープを回してたシステムから考えると、ショートカットできる部分が増えたんですけど、でもやっぱり手順としてはおんなじ。だからそこは、インディーズだから特にどうのっていうのはなかった。 スン・そりゃそうだ。別に、最高の印刷機使ったから、最高の印刷物が出来るってわけじゃないんだから。やっぱこう、関わってるすべての、気の抜けない何かがあるわけじゃない? 手は抜けても、気は抜けない何かっていうのが重要なんだよね。 シノ・うむうむ。 スン・それは僕よく松本(康男)さんと話すんだけど、結局生きてるやつが扱うのと、死んでるやつが扱うのは違うわけで、その判断は瞬間瞬間にあるわけよ。なるべく早くケリつけることだったりするよね。今のは良かった、悪かったって。 シノ・なるほどねえ。 スン・で、やっぱりそれに対してだんだん甘くなって行くんだよ。自分に対してまず甘くなってさ、そいで人に対して甘くなって行くと、ほんのちょっとのきわどいところが判断出来なくなっちゃう。だから、ほんとに上手い人は、レコーディングなんかも1、2回しかしないよね、きっと。 シノ・うん、そう。判断なので、ほんとに。 スン・集中力だよね。 ここで私の携帯電話が鳴る。相手は、この対談用の録音機材(DATレコーダーと小型マイク)を貸してくれた友だち。受け取った時にひととおり説明してくれたのだが、ちゃんと使えたかどうか心配して電話をくれたのだった。 スン・心配されちゃう人なんだねえ。 シノ・うん、そうなの(笑)。 スン・テープ入ってないんじゃないの? シノ・(笑)。 シノ・そう、それでね、やっぱり判断なんですよ。で、判断するに当たっては、自分の方向性がわかっているかどうかっていうこと。あたしだったら、じゃあ歌入れしましょうっていうことになったら、もう別にピッチがいいとか悪いとかはある程度修正して行けるので、そういうことじゃなくて、この歌をどういう風に歌うのかっていうこと。それはひも解いて行けば、シノハラミヤコとはなんぞやっていう所まで行くんだけれども、自分がこの歌に対してどういうアプローチをするのか、明るいトーンなのか暗いトーンなのか、そういうことに迷う。 スン・ふーむ。 シノ・なので、そこさえ自分で決めるなり、誰かディレクションする人がいて、こういう風に歌いなさいって言ってくれさえすれば、すごい速い。 スン・そりゃそうだよね。アンディ・ウォーホールがベルベット・アンダーグラウンドのファーストアルバムをプロデュースした時、聞いた話だと音を正面から聴かなかったらしいよ。後ろ向いて聴いてたって。 シノ・へええ。 スン・なんかいい感じだよねーってことだと思うよ。一生懸命やってるけど、なんか全然駄目だよねーっていうのとおんなじだよね(笑)。やっぱ、一生懸命やればいいってもんじゃないんだよな、きっと。なんかその肝心な何かをつかめてるかどうかっていう。 シノ・そうそう。あたしも多分、つかめてる所もあるし・・・ スン・やや一本調子な所もあるし。 シノ・そう、律儀過ぎるところもあるし、だからあたしの場合は、ほんとはちゃんと指示してくれる人がいた方がいいんですよね。 スン・そういうプロデューサーって、日本にはなかなかいないんじゃないの? シノ・いや、今回はそういう意味でとても信頼出来る人をお願いしたんですけど、スケジュールがなくて、あんまりまめに来てもらえなかったんで、ほとんど自分でやったんですけどね。 スン・まあ「その人」を待つ贅沢っていうのもあるけどね。よく、ラブコールして何年待って、やっとやれたみたいなのあるけど、それはそれで旬を失うわけじゃん。 シノ・そうそう。だから、これはこれでリアルタイムだってことでやるのも、ヘタはヘタでいいし。 スン・うん、そういうことだと思うよ。 とは言うものの、瞬間瞬間の判断は本当に難しい。言い出すと愚痴になりそうなので言わないが、それにしても、自分のことを自分で決めるのって、どうしてあんなに難しいんだろう? シノ・でもちょっといいジャケットが出来上がりそうで、あたくしご機嫌でございます。 スン・いやジャケット作りはね、一番重要なのはモデルになる人なんですよ。 シノ・あたくしですか? スン・そう。例えばね、病気になったり、交通事故に遭ったり、そういう状況が生まれた時、いい被写体になるんだよね。 シノ・ふーん。弱っちゃってるから? スン・そうじゃなくて、他の人にない何かがそこに生まれてるから。 シノ・ははあ。 スン・ミュージシャンがハッスルしてると駄目なのよ、ほんとはね。もうめんどくさいなあ、くらいでいいの。それが人から見た時オリジナリティだったり特異性だったりするからさ。だからどっかでね、まだシノハラミヤコは自分の元気なとこを見てもらいたいっていうのがあると思うのね、多分音楽的なとこ以上に。手紙みたいなさ。 シノ・ああ、そうね。わかります。 スン・お元気ですか、私は元気です、みたいなとこを写真では見せてるんだと思う。だから、それがより音楽的な方でそうなって行くと、自分なんか写ってなくても、充分表現されるんじゃないかな。 シノ・そうですよねえ。 スン・今はまだ足し算やってる状態で、今度は引き算して行ったら面白いと思うんだよね。なんて、簡単に言うけど(笑)。 シノ・(笑)。 2000年の一連の出来事、予想外の盛り上がり、ワンマンライブ、確かに私ははからずも尋常ならざる状況にいた。そしてCD制作。インディーズ進行とでも言おうか、出来上がってからリリースまでほとんどラグが無いため、音楽もジャケットも同時進行で、撮影日はレコーディングの初日でもあり、午前中一気に撮影して午後からスタジオに突っ込むというスケジュール。それぞれに於いて、現場責任者であり、撮られる人であり、歌う人であり、その使い分け、気持ちの切り替えの難しさに今回は本当に泣かされたが、撮影は専門外分野でもあるため、より一層気負っていたらしい。 新井満さんの『ヴェクサシオン』を読んで、そうだ引き算だ!と思ったのは『ありふれたグレイ』を作っていた頃である。いやはや、三つ子の魂百までとはよく言ったもので、人間てやっぱりそんなに簡単に変われないのよね。ま、いい。それも大事なリアルタイム。 スン・音楽に自信があればジャケットなんて何でもいいし、それこそ、ジャケットなんか要らない!余計なもんだ!って言われちゃうかもしれない。 シノ・そうお? スン・もっと行くと、CDさえも余計だ!ライブだけでいいじゃないか!みたいな(笑)。 シノ・パッケージすること自体が無意味だと。 スン・だって、本当に大道芸的な人だったら、レコーディングしたとたんに死んじゃうみたいなとこあるよね、きっと。 シノ・そうね。レコーディングしても、TD終わった瞬間になんか死んじゃう感じありますもん。いっつもTD終わった時が一番淋しい。あ〜あ、終わっちゃったって。 スン・それはね、フツーの女の子だからだよ。 シノ・えっほんと?!そうなのかなあ。 スン・うん。 シノ・うれしいっ(笑)。 スン・そこが武器なんだろうな、篠原美也子の。フツーの女の子的なとこが。 シノ・あたしね、ライブも大好きなんだけど、レコーディングのスタジオも大好きなんですよ。その風景ごとって言うか、コンソールがあって、エンジニアがいて、その向こうにブースがあってマイクが立っててみたいな、そのシチュエーションごと、もうほとんど愛してるのね。だからいつも、とにかくなるたけ長い時間そこにいたいって思ってて、ひそかに、何かトラブルでも起きないかしらなんて思ったり(笑)。 スン・コンセントとか抜いちゃうタイプだ(笑)。 シノ・そう!(笑)。たまに、デジタルだけど、ま、今だったら、コンピュータが固まってしまった!とか、みんなでおかしいなーってやってると、もっと、もっと長くかかってーとか思ったりするの。とにかく、現場にいるの好きだから。 スン・そうなんだ。僕は全く逆ですよ。もう一秒でも早く終わりたいよ(笑)。 シノ・(爆笑)。でもね、竹中直人さんがなぜ監督をやったのかって言ったら、あの人もやっぱり映画の撮影の現場が大好きなんですって。で、役者さんで行くと、自分の出番が終わったら帰らなきゃいけないじゃないですか。それが淋しくって、監督だったらずーっと現場にいられる!って思って監督やったんですって。もうその気持ちすごいわかる。 レコーディングに限らず、私は「現場」と呼ばれるものがとにかく好きである。写真撮影はもちろん、プロモーションビデオの撮影なども、映像ものは待ち時間が長かったりするので嫌う人もいるが、私は待ち時間大歓迎。たくさんのスタッフが、照明のシューティングをしたり、色々なセッティングをしているのを、飽きもせず眺めていたものだった。最近はnestで、自分の出番が来るまでPA席でライブを見るのが習慣となっているが、それも、ライブを見るということより、PA席という「現場」にいる感覚を愛しているからだと思う。 スントーさんの見たい「シノハラミヤコの顔」とは、カメラに向かう用の顔ではなくて、そうやってぼーっと「このまんま出番が来なきゃいいのになあ」なんて思っている時の顔なんだろうなと思う。 スン・あのね、写真にはふたつあって、鏡と窓、っていうのがあるの。わかるかな? シノ・?? スン・まず、撮れば撮るほど自分が写ってるっていう人がいるわけ。あるカメラマンで、白バックで色んな人のポートレートを撮るんだけど、僕が見る限りは、写ってるのはそのカメラマンなのよ、全部。 シノ・ふーむ。 スン・その人が鏡だとすると、別のある人は、自分が見たい何かを、自分のポートレート撮ってさえも写しちゃう。これが窓の人。 シノ・なるほどねえ・・・あたし、鏡。 スン・そうだねえ、典型的にそうだよねえ。 シノ・完全に鏡。自意識過剰で。 スン・でもさ、鏡が壊れた瞬間に、向こうに写ってる何かを発見しちゃうっていうのも、音楽のマジックなのよ。だからさ、例えばまあ、エムエスアーティストを経由して、今インディーズに来た。鏡の時期を経て、ひょっとしたら・・・ シノ・鏡は割れたのかなあ。 スン・粘土細工かなんかの時期に行くかもしれないよ。一生鏡の人なんていないと思うからさ。 シノ・うん、そうね。 スン・そういうこと。だから今回のジャケットは、一応鏡の縁まで行ったっていうジャケットになったんじゃないかな。自分で全部やったわけだし。 シノ・多分その、メジャーで6枚アルバム出して、あーだあーだやって、それはひとつの自分探しであったと思うので、ジャケットの変遷も含めて。契約が切れた時に、それが一回終わったんでしょうね。 スン・そうだね。サザンの桑田さんとか、窓の人だよね。 シノ・うん、すっごい窓。 スン・佐野(元春)さんはどうかな、やっぱり鏡だなあ。 シノ・うん、あの人は鏡だと思うなあ。 スン・窓も持ってるんだけどね。でもちっちゃい窓だな。そこからのぞいてる佐野さんがいて、それもすごく可愛いんだけどね(笑)。自分で自画像描いてみたら? シノ・あたし? スン・そう。鏡に向かって、反対の自分を描いてみたら?自分で知ってる自分て反対なんだから、左右が。 シノ・それってだいぶ違いますよねえ。 スン・だいぶ違うと思うけどなあ。 ここでお料理はラストオーダー。最後にコーヒーを頂きながら、対談は終了した。 ライブと撮影を振り返るつもりが、結果的に自分と自分のキャリア自体をを振り返るような内容になったが、新世紀になったことだし、このへんでひととおり整理しておく時期だったんだろうなと思う。 鏡は割れたのだろうか? 新しいCDを聴いて頂ければ、多分わかると思う。恐らく私は割れた鏡のかけらを拾って、そこに写る自分の姿をなおも凝視し続けているのだろう。それがいいにせよ悪いにせよ、その姿を記録できたということに今はただ無上の喜びを感じている。 音楽をこよなく愛し、尽きせぬ好奇心の持ち主であるスントーさんには、いつも驚かされたりへこまされたりあおられたりしっぱなしである。でもずっと変わらぬ友情と愛情で私をかまってくれ、多忙な中今回の対談にも快く応じてくれたことに、改めて心から感謝したい。またここから、戦いの歴史を作って行きましょうねっ(笑)。 最後に、今回初めてインタビューのテープを原稿に起こすという作業を行ったため、もし誤解を招くような表現があったとしたら、それはすべて私の責であることを付け加えておく。 |
| これが今回の対談のお相手スントーさんです! |
last up date 2001.2/10
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予定は、未定..