『いとおしいグレイ』
1994年11月23日リリース

1.灰色の世代
2.情熱
3.河を渡る背中
4.ジレンマ
5.話して
6.パーティ
7.ドアまでの距離
8.なつかしい写真
9.Tokyo 22:00
10.ありふれたグレイ

全作詞/篠原美也子


灰色の世代

わかりあえない淋しさは誰のせいでもないと知った
ひとりひとりの心には決して開かないドアがある
口に出せない悲しみが人を育てるものと知った
他の誰かにしてみたら取るに足らないことだから

果てしない淋しさよ くり返す淋しさよ
明日行くまだ見ぬあの道を照らして

どっちつかずの苛立ちは時を重ねるごとに増えた
卑怯者ならそれらしくせめて人のせいにはせず
わかりあえない淋しさを抱いてそれでも恋をしよう
わかりあいたいせつなさを抱いて人を好きになろう

果てしない愚かさよ くり返す愚かさよ
目の前の見知らぬこの道を照らして

喜びを悲しみをいとしさを恋しさを
伝えたくてもどかしくて だから寄り添うもの

果てしない淋しさよ くり返す淋しさよ
明日行くまだ見ぬあの道を照らして

終わらない淋しさよ くり返す淋しさよ
目の前の見知らぬこれからを照らして

目の前の見知らぬこれからを照らして



情熱

この街にあふれるざわめきに背中向けて
肩で息をしてたあの日をあなたは思い出す
両手に抱えた訳の解らない思いたち
名前も付けずにただきつく抱きしめてた

春が来るたびに何とかしようと思っては
ひとつまたひとつ行き止まりの扉の前
あなたは目を閉じて街の風に吹かれながら
誰のせいにもしたくないと言い聞かせてる

はやりの歌はいつも誰かの駆け引きで
運び込まれてくる夢たちを黙って選ぶばかり

本当にこれでいいのかとあなたはそっとつぶやく
どうしようもないことだと誰かがささやく だけど
本当にこれでいいのかとあなたは今日もつぶやく
胸の中で情熱が今も出口を探してる

この街のあちこち作りかけのビル眺めては
かたちにならないもののことをあなたは思う
両手にあふれる訳の解らない思いたち
時代と流行が勝手に名前を付けて行く

明日の地図はいつも誰かに仕組まれて
中途半端なまま何もかも巻き込まれてくばかり

本当にこれでいいのかとあなたはそっとつぶやく
気持ちは解るよ 誰かが肩を叩くけど だけど
本当にこれでいいのかとあなたは今日もつぶやく
胸の中で情熱が今も出口を探してる

あなたは目を閉じてただ風に吹かれながら
この街のかたちにはまらないものを思ってる
両手にあふれる訳の解らない思いたち
答えにならずにただきつく抱きしめてる

ざわめきは今日も街の隙間を満たしてる
ひとりひとりひとつひとつは言葉にならないけれど

本当にこれでいいのかとあなたはそっとつぶやく
生きて行くのだからきれいなことは言いたくないけど だけど
本当にこれでいいのかとあなたはそっとつぶやく
どうしようもないことだと誰かがささやく だけど
本当にこれでいいのかとあなたは今日もつぶやく
胸の中で情熱が出口を探し続けてる
胸の中で情熱が出口を探し続けてる



河を渡る背中

あなたの夢を見た 遠くで手を振っていた
今どうしているのだろう 夢はまだ遠いですか

あなたが言っていた言葉をふっと思い出す
生きて行く それだけならどこにいても何をしてでも

流れて行くのか 流されて行くのか
いずれにしてももう選べない

暗闇に沈むこの河の向こう
数え切れない背中が目指して行く
それぞれに描く岸辺には決して
たどり着けないとわかっていても

私の夢はまだ遠くで手を振っている
生きて行くだけの日々はゆるやかですこし淋しい

恐れることより受け止めることね
強くなるよりも逃げないことね

暗闇に沈むこの河を渡る
数え切れない背中が力尽きる
胸の奥深く描いた岸辺に
手を伸ばしながら 伸ばしながら

あなたの夢を見た かすかに笑顔が見えた
そうねきっとあなたもまだ どこかでこの河の向こう目指している

暗闇に沈む幾つもの背中
たどり着けずに流れに呑まれても
恋しい誰かや 尽きせぬ思いに
たどり着きたくて たどり着きたくて
あなたもどこかで 私もこうして
この河の向こう目指す背中のひとつ

この河の向こう



ジレンマ

一日中ぼんやりとテレビばかりを眺めてた
世の中はあれこれと辻褄合わせのパレード
深い椅子の中から正義の味方が叫んでる
君の為 君の為 命さえも賭けるとわめいてる

走ったことない誰かがまた裸足のランナーを語る
誰が嘘で どれが本当 そんなことはもうどうでもいい

いい人はどこか照れ臭い 悪ぶってばかりは青臭い
目を閉じてるだけじゃせつなすぎて 声にならずにうつむいてるだけ

幸福は様々に不幸は一様に与えられ
薄い壁を隔てて辻褄合わせのパレード
似たようなトーンで正義の味方が叫んでる
負けないで 負けないで 本音で生きなさいとわめいてる

敗れたことない誰かがまた裸の負け犬を叱る
嘘っぽい真実よりもいんちきな現実の方が暖かい

大きな声は聞きたくない ヒステリックなのも好きじゃない
本当のことだけじゃ恥ずかしくて 声も立てずにうつむかされてる

白か黒 ○か× 勝ちか負け 善か悪
そんなものじゃ計れない それだけじゃ選べない
そんなことじゃもう決めたくはない

正義の使者は信じ難い やたらすねてるのも趣味じゃない
本当のことだけで生きて行けば きっと誰かをうつむかせてしまう
いい人はどこか嘘臭い 悪ぶってばかりじゃしょうがない
目を閉じてるだけじゃせつなすぎる
うつむかせたくないうつむきたくない



話して

あなたの声 あなたの横顔
いつもと同じと誰もが言うけど
私だけに見えるその陰は
日ごとにその色を深くする

あなたの夢 あなたの憧れ
時間も忘れて話してくれたね
遠すぎる未来に戸惑い
自信を無くした日もあったけれど

胸に吹く風隠し切れない そんなあなたがとても好き

肩をすこし寄せるだけで心の場所がわかるから
隠さないであなたの痛みのわけを 私を見て

恋に落ちて 朝を分け合って
時には疲れた言葉に泣いても
信じている 選び合った奇跡
あなたは私を 私はあなたを

世界中が背中向けてもあなたの為に笑いたい

瞳閉じていてもわかる 溜め息つく顔が見える
隠さないであなたの痛みのわけを 私を見て まっすぐ見て

肩をすこし寄せるだけで心の場所がわかるのよ
隠さないであなたの痛みのわけを 私を見て
ここにいる



パーティ

ルージュを選ぶ手つきがいつもよりすこし念入り
何を期待してるの? 鏡に向かって問いかける
仲間とのパーティなんだし主役は他にいるんだし
何を浮わついてるの? エキストラのくせに馬鹿みたい

スーツを選ぶ目つきが何だか妙に真剣
何を考えてるの? 鏡に向かって問い詰める
仲間もみんな来るんだし楽しいことはあるんだし
何を誤魔化してるの? ひとりでいるのが嫌なだけ

会いたかった どうしても
会いたかった 誰かに

ひととおりの笑顔浮かべてぼんやり挨拶くり返す
何を考えてるの? 無邪気な声にうろたえて
罪の無い噂話にその気もないのに相槌
何を怖がってるの? どのみち誰もがわかってる

会いたかった それでも
会いたかった 誰かに

champagne night 華やかさの陰 苛ついた視線
champagne night 夜が明ければ海の泡のように消える

グラスについたルージュを指先でそっとぬぐって
こんなに賑やかなパーティ ひとりだけ海の底みたい
ひとりきりなんて馬鹿みたい

champagne night 華やかさの陰 横たわる思い
champagne night 気まぐれな街で誰もが夢見て
champagne night 夜が明ければ海の泡よりもはかない
海の泡よりもはかない



ドアまでの距離

タクシーを降りて手を振った テールランプが消えるまで
凍る息を長く吐いて 部屋へ続く階段昇る

もう会わない
いつも思う こうして階段昇るたび
もう会わない
声に出して重い足を励ますけれど
もう会えない
思うだけでもう一歩も歩けなくて
あと何段?
ドアが遠い 見上げれば階段は続く

電話してたの知ってる とぎれとぎれの言葉の相手
誤魔化してよ 誤魔化してよ そんなにうれしそうに笑わないでよ

もう会わない
いつも決める 座り込んだ階段の途中
もう会わない
愚かな夢見たがる心止めなきゃ

もう会わない
これ以上思い出を増やしたくない
もう会えない
そう思えばあれもこれも伝えずじまい

時計見てたの知ってる 顔を見れるまであと何分
嘘をついてよ 嘘をついてよ ひと晩中でもつきあうと言ってよ

もう会わない
今度こそは 座り込んだ階段の途中
もう会わない
声に出して愚かな夢を止めなきゃ

タクシーを降りて手を振った 今頃別の腕の中
もう会わない ドアは遠い 部屋へ続く階段昇る



なつかしい写真

古い写真を見つけて笑い転げているあなたは
すこし髪が伸びたけれどそのくせあの頃より若い
何てなつかしい写真 並んだ幾つもの顔から
忘れかけてた色んなこと思い出してせつなくなった

風のかたちに憧れて いつか風になろうとしてた
すぐに冷める若さの熱と誰もが笑ったけど

誰に教えられたわけでなく 誰にも似ていないものが好きで
誰に指図されたわけでなく こうして生きて行くことが好きで

そうねあの頃はみんな手当たり次第噛み付いては
すぐに泣いたり笑ったり 他愛ないほどに夢中だった
いつも夢ばかり見ては朝が来るまで話していた
望むことはきっと叶う 理由もないのに信じられた

風のかたちを追いかけて いつか追いつけないと知った
それでも止まらぬときめきを誰もが笑ったけど

誰に教えられたわけでなく 恋をして破れて泣きながら
誰に指図されたわけでなく こうして大事な人と出会った

何てなつかしい写真 あなたも私も変わったね
だけどそれぞれの風を今も新しい靴で追いかけてる

誰に教えられたわけでなく 誰にも似ていないものが好きで
誰に指図されたわけでなく こうして生きて行くことが好きで
誰に教えられたわけでなく 誰にも似ていないものが好きで
誰に指図されたわけでなく こうしてこれからも生きて行く



Tokyo 22:00

赤い目をしたあの子は泣いているのかそれとも
慣れないヒールのせいでからだ揺らしながら歩くのか
青に変わった信号気付かぬほどにうつむいている
小さな背中に手を当てて訳を聞いてみたくなる

人を憐れむことで自分を救うことをいつか覚えてしまった
悲しみをそっと比べ合う時 慰めの言葉は心地好くて

雨が降り出す前触れ 空気が微かに重くなる
どうしてこんな街の真ん中で自分から目をそらせない
風はどこからどこへ行く そんなくだらない問いかけ
誰かにしてみたくていつの間にか私もからだが揺れ出す

話上手になるほど話せないことが胸の奥に増えて行く
本当は誰より背中を押して欲しくて だから余計に背中を伸ばす

街はいつでも光あふれ 声にならないざわめきが満ちて
人も車も 夢も挫折も みんなどこかへ流れて行く

夜に紛れる人たち 開いた傘で顔が見えない
12時過ぎればひとりずつ待ち疲れたシンデレラ
朝になったらいつものように笑顔を配りながら
誰かの望む自分でいることにすこしずつ疲れて行く

人をうらやむことで自分を許すことをいつか覚えてしまった
なりたいものを追うよりなれるものをいつの間にか探していたね

街は今夜も光あふれ ひと夜限りの夢の花が咲く
生きる手立てを選ぶ間もなく だけどこの街で生きて来た

海の青さに負けぬように 空の高さに届くように
闇の深さに怯えることなく 月は黙ってくり返して行く

街に光があふれるほど 人は色濃く長い影を曳く
今日も明日も 過去も未来も ずっとこの街で生きて行く

街はまばゆい光あふれ 声にならないざわめきが満ちる
恋に破れて 夢を失くして だけどこの街で生きて行く

声にならずに 伝え切れずに だけどこの街で生きて行く



ありふれたグレイ

はやりの服は好きじゃなくて
わざと知らんふりで歩いた
立ち向かうこと それが勇気
信じることはたやすいから

燃えるような赤に憧れて
声を嗄らして叫んでみたけど
燃え残る思いはいつも同じ
望めば望むほどに ありふれたグレイ

自分の色がわからなくて
届かぬ人は皆あざやか
強く見えるのは弱いから
隠していたくてひとりでいた

透き通った青になりたくて
クールな振りでうつむいてみたけど
水の中映る思いは同じ
選べば選ぶほどに ありふれたグレイ

流されること それも勇気
本当の気持ちに名前は無い
好きになりたくて 弱いから
どこにでもある生き方で

かたちの無い風を追いかけて
どこへだって流されて行けるよ
手の平の思いはいつも同じ
走れば走るほどに ありふれたグレイ
静かに息をしてる いとおしいグレイ

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